第7期修了生の声

Alumni Testimonials

IR担当者向け実践プログラムを受講して
 
立正大学
経営企画部経営企画課
菊池 太樹
 

 この先大学職員として長くキャリアを歩んでいくための武器を得たい――その思いから、新卒で入職して4年目となる2025年に、山形大学「IR担当者向け実践プログラム」の受講を決意しました。大学を取り巻く環境が厳しくなり、データに基づく判断と説明責任の重要性が増している中で、データをマネジメント・分析・説明する力は、IR担当者としてはもちろん、今後どの部署においても価値を発揮する大きな武器になると考えていました。この『修了生の声』では、私がこのプログラムで最も成長を実感した「プレゼンテーション発表会」を中心に執筆したいと思います。

  まず、第7期プレゼンテーション発表会の概要を簡単に紹介します。架空の大学(IR大学)のIR担当者である私は、大学執行部から「昨年度末に実施した1年生満足度調査のデータを分析し、その結果を会議で報告するように」と依頼を受けます。会議の出席者は、大学執行部・学部執行部・部課長です。発表にあたっては、単純な集計結果の報告ではなく、データの分析結果を分かりやすく整理して、ストーリーとして伝えることが求められます。発表会当日は、講師陣が「スライドを含めた発表の分かりやすさ」「制限時間の厳守」等の観点から評価を行います。

 下ごしらえした具材(分析に適したデータ)から様々な料理(図表)を作り、その中から伝えたい内容にふさわしいものを選んでコース(ストーリー)として提供する――これがプレゼンテーションの準備から発表までの流れです。このプロセスを通して、IR担当者に必要な、データをマネジメント・分析・説明する力を存分に鍛えることができたと感じています。

 まずは、配布されたデータセットをデータ分析ツールで扱いやすい“Tidy”な形式に整えます。具体的には、エラー・重複・欠損値の確認を行い、データが複数のシートやファイルに分かれている場合は、キーとなる列で結合します。そして、“Tidy”なデータの条件である「1行1観測値」のロング型データへと変形します。実務で扱うデータは、最初から分析に適した形に整っていることは稀であるため、こうした前処理の技術は不可欠だと痛感しました。なお、本プログラムでは、充実した講義動画を通して、分析に適したデータの特徴を学び、RやExcelを使って実際にデータをその形へと整える技術を習得できるため、初心者でも安心して基礎から力をつけることができると思います。

 データの前処理が終わると、次は分析に入ります。RやBI ツールを使ってデータを図表に変換していきますが、ここでは、本プログラムで学んだDSBC(Divergent Stacked Bar Chart)が大いに役立ちました。DSBCは、ゼロを中心に正負の値を左右に配置して比較できる積み上げ棒グラフです。今回のデータセット(1年生満足度調査)のようなアンケート結果の分析に適しており、回答(「あてはまる」〜「あてはまらない」)の比率や偏りを直感的に把握することができました。また今回のデータセットは、全体で見ると「男性の満足度が高い」ように見える一方、学部別で見ると「女性の満足度が高い」結果になるという、「シンプソンズ・パラドクス(全体で見た傾向とグループで見た傾向が逆転する現象)」が発生するように仕組まれていました。これは、ディレクター藤原宏司先生からの愛のある罠だと感じましたが、このデータセットを分析する経験を通して、単純に全体で見た傾向だけで結論を出すのではなく、データを様々な切り口で(掘り下げやグルーピングを行いながら)確認することの大切さを実感しました。

 そしていよいよ最後は、プレゼンテーション資料の作成です。依頼者に「意思決定の参考になった」と言われるような情報提供をすることが、本プログラムを通して腹落ちしたIRの役割であり、今回のプレゼンテーションで大事にしたテーマでした。そのため、事実をただ並べて読み手に委ねるのではなく、自分自身がその事実をどう解釈したのかまで伝えること、つまり分析結果を整理し、意味のある流れとして示す「データ・ストーリーテリング」を意識して資料を作成しました。このプロセスを経験する中で、私はサマリーの重要性を強く実感しました。ストーリーの骨格となるのが、要点をまとめたサマリーだからです。サマリーは作成者が伝えたいメッセージそのものであり、そこが明確であれば、後はその根拠となるデータ(図表)やその順序が自然に決まり、プレゼンテーション資料全体が形づくられていきます。

 とはいえ、サマリーの作成は、実際に取り組んでみると想像以上に難しいものでした。そこには、生み出す難しさと見せる難しさの両方があります。分析が浅い段階では伝えたいことは見つからず、さまざまな角度からデータを可視化してその特徴を浮き彫りにしていく中で、ようやく「このデータからこれを伝えたい」という要点(サマリーにする部分)が見つかります。こうした、データに精通するための泥臭い探索の積み重ねが、IR担当者には欠かせないと感じました。また、サマリーのまとめ方(見せ方)にも難しさがあります。

 説明しようとするあまり、1枚のスライドに情報を詰め込みすぎてしまうのは大学職員によく見られる傾向ですが、私も例外ではありません。本プログラムで藤原先生から繰り返し強調された「捨てる勇気」を持つこと、つまり、相手の立場に立って、本当に伝えたいことを1枚のサマリーとしてわかりやすく、簡潔にまとめることがいかに難しいかを、プレゼンテーション資料の作成を通して学ぶことができました。

 プレゼンテーション発表会当日は、発表者の緊張感がオンライン越しにも伝わってくるほど、全体として手に汗握る雰囲気でした。私自身は、「この分析結果を共有したい、伝えたい」という思いを持って資料作成および発表練習に取り組むことができたと思っており、発表会当日は緊張を感じながらも、それ以上に高揚感を持って臨むことができました。また、当日は他の受講生の皆さんの分析発表を見て、「こんな分析の切り口やデータの見せ方もあるのか」と毎回新たな気づきが生まれ、学びがより深まりました。

 さらに、本プログラムでは「みんなで幸せになろう」というコンセプトのもと、Teamsチャネルでの意見交換やリアルタイム授業中のグループワーク等、受講生同士が知識や気づきを共有したり助け合ったりできる機会が多くあり、大きな励みとなりました。藤原先生との個人面談では、自身の改善ポイントを丁寧にご指導いただきました。こうした恵まれた学習環境のおかげで、最後まで高いモチベーションを維持することができたと感じています。

 最後に、このプログラムを企画・運営してくださった山形大学の先生方、講師の皆様、事務局の皆様、そして、一緒に学んだ第7期受講生の皆様に心より感謝申し上げます。本プログラムを通じて得られたこのご縁を今後とも大切にさせていただきたいと思っております。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

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